昼寝の効用と自分にとっての最適条件
どなたでも経験があると思います。どうしようもなく眠いとき、つい居眠りをしてしまい、はっと目覚めたときに時計を見て、それほど時間が経っていないのにスッキリして眠気から解放された経験がある方は多いと思います。この短時間睡眠の効果、短時間の昼寝の効果については、最近特にその効能についてさかんに取り上げられているように思います。私も同様に、若い頃からこの効能に気づき、積極的に取り入る努力をしてきました。その努力の過程の一端と成果をご紹介したいと思います。
まず、結論を先に述べます。簡単ですが「午後2時ころに30分間横になって眠る」これが私にとって最も効果的な午睡方法の一つです。就職した当時から翻訳者として現在に至るまで、試行錯誤を重ねながらたどり着いた結論です。
昼寝をして幸福になる
短い時間でも熟睡したあとの爽快感がなんとも言えないという経験をした人は多いと思います。昼間の10分の熟睡は夜間の1~2時間の睡眠に匹敵する(20分の熟睡が夜間の2~4時間の睡眠に匹敵するわけではないと思いますが)という話も、科学的根拠は確認できていませんが、聞いたことがあります。昼寝の効用については多くの科学的研究がありますが、それもかかわらずなぜあえて取り上げるかと言いますと、多くの人はわかっていても実行しない、あるいは実行することがむずかしいと思うからです。私も眠気はこらえることが重要であると考える時期がありましたが、これはエネルギーと時間の無駄遣いになると反省しています。そこで、昼寝の効用について社会的な認知度を向上させ、昼寝は怠けではなく疲労回復と生産性向上の極意であるという良識の啓蒙に役立ち、誰もが遠慮することなく短時間昼寝することができるようになり、生産性の向上と、少し大げさですが、日本人の幸福度の向上に役立つことができればと思うからです。
会社員時代の昼寝
私は2つの民間企業に勤務した経験があります。こういうこともありました。二番目の会社をやめる数年前のことです。私は毎日のように休養室(正確な名称は忘れました)で昼寝することを日課にしていました。疲れている日は午前中に寝ることもあり、仕事をなかなか抜けられない日には夕方近くに寝ることもありました。休養室はあまり広くはなく、せいぜい数名の入室が限度で、それ以上入るとストレスを感じるくらいの空間でした。15畳ほどの広さだったように思われます。私の仕事は研究開発で、研究所は大きな建物10棟ほどで構成されていました。主要な建物には休養室があり、マッサージ機が1,2台おいてありました。ある日いつものように、居室のある棟ではなく、人気の少ない別棟の図書室の横の休養室でマッサージ機のスイッチを入れ、全身をマッサージされながら心地よく睡眠状態に移行しつつありました。そのマッサージ機はパナソニックの最上位機種で、かなり大きなものでしたが、ほぼ限界まで水平に倒し、部屋の照明はつけないまま気持ちよく寝ていました。すると突然、照明のスイッチが入り「キャーーーー」とものすごい叫び声がしたのです。昼寝するときは寝付きをよくするためにいつも耳栓をしていましたので、叫び声はそれほど大きくは聞こえませんでしたが、ただ、ものすごく騒いでいる人がいるな、と思いながら身動きせず寝続けていました。すると「だっ、だっ、だいじょーぶですか?」と聞くので「大丈夫です」と平静を装って返事すると、叫んだ人はそそくさと部屋を出ていきました。どうも二人くらいの女子社員が入ってきたようでした。
そういうこともありましたが、休養室を臆面もなくどうどうと使用していました。一棟に一室、狭い休養室が与えられても、大きな組織ではみなさんが遠慮し、稼働率はほとんどゼロに近いように思われました。その設置の趣旨からだれも敢えて何も言いませんでしょうし、遠慮することなく使用したほうが得だと思いながら使用しておりました。大切なこととしまして、特に騒音が気になる方は、昼寝のときには耳栓をしたほうがぐっすり眠れると思います。専用の耳栓が販売されていますが、遮音性能が高すぎてまわりの気配をほとんど感じ取れなくなるおそれがあり、私はかわりに良質のティッシュペーパーを耳の穴に合う大きさにまるめて使用しておりました。光が気になる方は、消灯できなければアイマスクも用意する必要があると思います。また、予定した時間だけ眠ることができるように目覚ましになるものを用意しておく必要があり、私の場合、会社から支給されていたPHSをマナーモードにし、振動で目覚めるようにしていました。振動が伝わりにくいのか睡眠が深すぎたのか、2時間ほどぐっすり眠ってしまい、焦ったことがありました。
このようにして毎日のように昼寝していたおかげで、夕方になっても気力体力が衰えず、大変効率よく仕事をすることができたように思います。ただ会社員をしていますと、毎日の疲労具合や忙しさが大きく異なること、単独で仕事をしているわけではないため周囲の干渉がランダムに入ってくること、仕事の成果を出さなければならないことなど…これらのことから短時間睡眠の最適条件を確立するまでには至りませんでした。
自分にとっての最適条件
翻訳者になるために会社をやめてから、仕事を軌道に乗せるためにしばらくバタバタしておりました。翻訳の仕事は、納期は決められていますが、ほぼ自分の裁量で時間配分を決めることができます。2年くらいして仕事が軌道に乗りだしてから、短時間睡眠の最適条件を探すべくいろいろ試行錯誤を重ねました。その結果、私の場合、午後2時前後に30分だけ横になって眠ることが最適であるという結論に達しました。「私の場合」と前置きするのは、前提としまして、疲労が極度に蓄積していない、夜寝て昼間活動する規則的な生活を送っている、自分の裁量で仕事の時間配分を決めることができることなど、個人に固有の条件があり、また生理的にも個人差があると考えられるからです。
30分という時間は、横になってから目覚めるまでの時間で、実際に眠っている時間はこれよりやや少なくなります。私の場合、30分より長いと夜寝付きが悪くなったり、朝方目が覚めやすくなったりし、30分より短いと睡眠不足解消と疲労回復効果が不十分に感じることが多くなります。午後2時前後という時間は、昼食後に一番眠気を感じ始めるのですが、あまり遅くなると夜の寝付きが悪くなるからです。
めったにありませんが午後になってもあまり眠気を感じないことがあります。そのようなときでも横になって目をつぶっていますと、いつの間にか寝入ってしまい、しかも目覚ましが鳴っても、体がだるく、なかなか起きられない場合があります。これは、疲労していても自覚できない場合があるのではないか、と自分では解釈しています。頑張りすぎて倒れたりすることがあるのは、疲労を自覚できていないことも原因ではないかと思うのですが想像の域を出ません。大事なことは、眠くなくても、疲れを自覚できなくても、一定時間仕事を続けた後では休養を取ることが大事だいうことだと思います。多くの研究では、レム睡眠やノンレム睡眠、脳の働きのメカニズムなどを持ち出し、いろいろむずかしい話を組み立てて話してくれますが、私には今ひとつ説得力を感じられません。非科学的に聞こえるかもしれませんが、自分には自分の睡眠があり、自分にしかわからない領域があるのだと思っています。
最適条件は自分だけのもの
逆説的な論理展開になりますが、ここで個人的な細かい話を持ち出しても個別には役立ちにくく、各人が各個に最適な短時間睡眠や休養の最適条件を模索する必要があると思います。 午後に短時間でも眠ることができるようになり、生産性向上と幸福度の向上のためにこの記載が何らかのヒントになればと思いました。
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