実践的疲労回復の極意  その1 ウォーカーズハイ?

素晴らしい体験 ― 歩くことで幸福感

2つの民間企業に勤務した経験があります。二番目の企業に勤務していたときのことです。職場は、広い敷地にある研究所でした。自宅から直線距離で4 Kmはありませんしたが、徒歩での通勤経路で測ると自宅玄関から職場の更衣室までちょうど4 Kmほどでした。当時の状況をはっきりとは思い出せませんが、運動不足を感じたためと思うのですが、通勤経路の片道だけを歩くことにしました。いつもは20分ほどかけて車通勤をしていましたが、帰宅時、車を会社の近所で借りている駐車場に置いたまま歩いて帰り、翌朝歩いて会社に行くことにしました。朝歩いて出社した日は車で帰宅し、翌朝は車で出社してその日の夕方は歩いて帰宅するという具合に、片道だけ歩くことにしました。往復を徒歩で通勤するのには、仕事が忙しく、通勤に時間を取られ過ぎることに抵抗がありました。

初めて歩いた日は、始業時間の50分くらい前に自宅玄関を出ました。途中、踏切や横断歩道でなければ渡れない大きな道路などがあり、思ったように進めないので、所々で小走りに走り、寒い気候でしたがかなり汗をかきました。遅刻してはいけないと一生懸命に歩き、玄関を出てからちょうど40分で会社の更衣室に到着しました。平均時速6 Kmで歩いたことになります。

更衣室に到着し、作業服に着替え、階上にある居室に向かいます。するとどうでしょう、いつもの気だるさや眠さがまったく感じられないのです。それどころか、体の芯から湧き上がるような快感を全身で感じられるのです。作業服の下はかなり汗をかいていて、肌に冷たく感じるくらいなのですが、いつも睡眠不足気味であったにもかかわらず眠気や疲労感はなく、全身が爽快感と、わけもなく湧き上がる幸福感に包まれているように感じるのです。しかも、昼になっても夕方になっても、強度こそやや低下してくるのですが、爽快さや幸福感に満ちた状態は続きました。

繰り返し得られる爽快感

体験した幸福感が忘れられず、会社をやめるまで、悪天候や特別に忙しい時期を除き通勤経路の片道だけ歩くことを続けました。初日の幸福感ほどの強度は得られませんでしたが、目的地に到着し、一息ついたときには得も言われぬ幸福感が湧いてきました。夕方や夜間に家まで歩いたときではなく、朝8時ころ、始業時間に間に合うように会社まで歩いたときの幸福感のほうが強く感じられました。睡眠中に滞っていた血液に酸素が供給され、足の先から頭の天辺まで老廃物が洗い流されるようにも思われましたが、実際のところはよくわかりませんでした。

爽快感の条件

この幸福感、爽快感は20分の歩きでも30分の歩きでも得られず、40分歩いて初めて得られるように感じられました。また、ゆっくり40分歩いても感じられず、私の場合、平均時速6 Kmほどで40分歩き、真冬でもセーターを脱がないと汗びっしょりになる強度で歩かなければこの爽快感は湧いてきませんでした。また、ゆっくり1時間以上歩いても得られませんでした。時速6 Kmで40分を超えて歩くことまでは確認していませんが、おそらく一定の心拍数に達し、一定の時間歩くことでこの爽快感が得られるのではないかと思います。また、個人差もあるものと思われます。

ランナーズハイという言葉があります。手持ちの英和辞書「リーダーズ+プラスV2(株式会社研究社 2000年)」には次のように載っています。

runner’s high

ランナーズハイ 《長時間のランニングなどの酸素消費運動で経験される陶酔状態; 血液中のエンドルフィン (endorphin) の増加によるものとされる》.

エンドルフィンを同辞書で引くと次のように出ています。

endorphin

n 【生化】 エンドルフィン《モルヒネ様作用を示す内因性ペプチドの一種; 鎮痛作用がある》.

効果の説明と提案

この辞書の記述はやや古い情報ですが参考になります。若い頃、この陶酔感を何度か味わったことがあります。弱い陶酔感であれば、日頃のジョギングでも味わっていると思いますし、その感覚が運動を継続する動機づけの一つになっているように思われます。ただ、上記の平均時速6 Kmで40分歩いたときの幸福感は、運動後、より長く強く継続したように思われました。もっとも同時に比較できていないこと、人間の記憶は再構成されることなどから明言はできません。しかしながら、一定強度の運動を一定時間続けることで、得も言われね幸福感が得られ、疲労の回復に大いに役立つことは確かだと断言できると思います。

このような経験がない方にはぜひこの幸福感を味わっていただきたいと思います。爽快感、幸福感を感じ、疲労を忘れるような最適条件がどなたでも探せば見つかると確信いたします。

大切な注意点があります。歩き慣れていない方は、足を痛めるおそれがあるので、低速で歩き慣れることから始めることを強くお勧めいたします。また、足に合ったしっかりした靴で歩く必要があると思われます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました